万年筆とは?
日本工業規格(JIS)によれば、万年筆は「胴内に保有するインキがペンポイントを溶着したペン先に自動的に伝わる機構をもつペン」と定義されています。
とはいっても、これだけで万年筆という筆記具についてピンと来る人は少ないのではないでしょうか?ここでは、万年筆という文具の特徴や歴史背景をご紹介します。
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万年筆の特徴
万年筆は、2つに割れた小さな金属のペン先から生み出されるデリケートな書き味が特徴です。この独特の書き味は、ペン先にかかる力の強さによって生み出されます。
万年筆のインクは、ペン芯と呼ばれる細かい溝が彫られた部分を伝わってペン先に供給されます。供給されたインクは毛細管現象によって、ペン先の裂け目を伝わって流れ落ちることで文字を書くことができます。
万年筆は低筆圧でスムーズな書き味が可能であり、その名の通り、メンテナンスを行うことで半永久的に使用できます。また、使用者の癖などでペン先の削れ等に個体差が出るため、使い続けるに伴い使用者になじみ、独特の筆跡を表現することができます。
一方で、ペン先が露出していることからも乾燥に弱く、構造上、引っかかりや滲みが生じやすいという欠点もあります。初めて使う場合には少々慣れが必要ですが、書き慣れれば非常に疲れずに書くことができ、書く楽しみも増すことでしょう。
万年筆の歴史
万年筆の歴史は古く、誕生は1,000年以上前に遡ります。西暦953年、万年筆の原型はエジプトのファーティマ朝カリフであるムイッズのために、手や衣類を汚さないペンとして発明されました。その後、イギリスやアメリカで特許の取得および改良が繰り返され、日本に入ってきたのは西暦1,884年のことです。
当初、針先泉筆という名で輸入・販売され、その直後から萬年筆と呼ばれるようになりました。1,960年代頃まで手紙やはがき、公文書などの筆記具として主流でしたが、公文書へにボールペンの使用が可能に立ったことを皮切りに、筆記用具としての主流は万年筆から、より安価なボールペンへと移り代わりました。現在では、万年筆はその独自性や貴重性などが評価され、趣味の高級文具として愛されています。
万年筆とボールペンの違い
現代の万年筆に代わる主流文房具であるボールペン。その種類は様々で、書き心地が滑らかでインクが滲みにくい高性能なものが、安価で購入できる時代になりました。書き味という点では万年筆も劣っていませんが、実際には両者にどのような違いがあるのでしょうか。
ボールペンの特徴といえば、なんといっても安価で使い勝手が良いことが挙げられます。インクはペン先の球が転がることによって送り出され、均一の書き味を実現しています。もしペン先が傷んでしまっても、新品を買いなおせば済んでしまいますので、高級なものでない限り、あまり思い入れがないように感じます。
一方で万年筆は、ボールペンよりもはるかに高額で、品のある高級文具です。その理由は、種類にもよりますが、ペン先に金が使われていることが最大の特徴です。
また、ペン先の傷みやインクの出に関しても、自分で修理したり修正する楽しみを兼ね備えており、趣味としての位置づけが強いのが特徴です。また、万年筆においては顔料インクや高性能インクなど、選択の幅が広く、筆跡の保存性にも優れているため、重要書類などを書く際には万年筆のほうが良いとされています。
万年筆の構造
パーツが複数あり一見するとややこしいようですが、実際には万年筆の構造はとてもシンプルで、非常に理にかなった構造をしています。
ペン先(ニブ)の構造
ペン先は万年筆の命です。ペン先は基本的に14Kもしくが18Kの金が使われています。その理由として、金は弾力性に優れるだけでなく、酸化や腐食にも強いためです。
一方、ペン先の末端は丸い金属が溶接されていますが、これは金とは異なる金属が使用されます。金は弾力性に優れていますが、摩耗には弱いため、より硬い金属を溶接することで耐久性を向上させています。
また、ペン先にはハート穴と呼ばれる穴が中心についており、筆圧によってどれくらいしなるかを左右する重要な部分です。ペン先は、インクの流れを調節するペン芯と組み合わせることで、インクが供給されます。ペン芯にはインクが出る溝と空位が通る溝があり、安定したインクの供給が可能となっています。
インクの吸入法式
まず前提として、万年筆に用いられるインクは全て水性であるという特徴があります。油性ではペン先で固化して詰まってしまうだけでなく、独特の書き味が失われてしまうため、油性インクは用いれらていません。
また、インク充填の方式には、カートリッジ式とコンバーター(吸入器)式の2種類が存在します。近年では、付け替えるだけの簡単なカートリッジ式が採用されているものが多くなっています。昔の映画や署名式などで使われている古いタイプのものはコンバーター式であり、ペン先をインク瓶に浸してインクを吸い上げます。
万年筆で文字が書ける仕組み
万年筆は、毛細管現象によってペン芯から送り出されたインクが、スリット(切り割り)と呼ばれる部分を通り、紙へと運ばれます。この際、ペン先とペン芯の微調整により、インクの出る量などを調節することができます。しかし、調節が不適切な場合、インキが滴ったり、逆に字がかすれてしまったりします。字の太さは大きく分けて7種類あり、ペン先のハート穴より先の部分が筆圧によってしなることで、独特の筆跡を書くことが可能です。
万年筆の持ち方
万年筆は、45度から60度傾けて書くのが最も良いとされています。ボールペンよりもやや寝かせ気味を意識して構えます。基本的には人差し指と親指で挟む形で持ち、中指は爪の部分で後ろから支えるように持ちます。ボールペンなどとは違い、手首は自由に動かせるように余裕を持たせましょう。