ボールペンのチップについて
高級ボールペンから100円ボールペンまで、ボールペンには様々な種類があります。
書きやすいもの書きにくいもの、性能もそれぞれです。そんなボールペンの性能を決定づける要因は先端にありました。
ここでは、先端部品のひとつ「チップ」の材質ごとの特徴についてご説明します。
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ボールペンのチップとは?
チップとは、ボールペンの先端にある貫通した穴のあいている小さな棒状の部品です。
片側でボールを自由に回転出来るよう固定し、反対側はインクタンクに接続しています。このようにして、インクをボールに流しています。
ボールペンの性能を左右するのがこの一連の先端部分であり、加工には高度な技術が必要とされます。
特にチップは重要で、その精密さは、機械式腕時計の部品と同等の精密加工機によりミクロン単位の加工精度が求められます。
この加工精度の違いにより、ムラなく書けるか、なめらかな書き味が決まります。
しかし、金属製で頑丈そうなチップですが、精密加工ゆえに非常にデリケートであり、筆記以外の使用方法をすると書きにくくなったり、インクの過不足の原因となります。
また、チップに使われる材質も様々であり、それぞれ特徴がります。以下にその種類ごとの特徴を記載しますので、参考にしてください。
快削黄銅で作られたチップの特徴
まず黄銅とは、「銅」「鉛」「亜鉛」からなる合金です。この割合によって名前も異なります。
いずれの黄銅も、優れた展延性と適度な硬度を持っており、切削加工が容易である。
それに加え、価格も高価ではない為、精密な加工が要求される金属部品としてよく用いられます。
例えば、給水管や模型の素材、弾薬の薬莢、5円玉などです。
その中のひとつ、快削黄銅は、その名の通り加工のしやすい黄銅です。
鉛の添加が比較的多く、銅合金の中でも被削性に最も優れており、ねじや歯車等の機械部品によく用いられています。
その加工のしやすさと製造コストの安さから、ボールペンのチップにも使用されています。
しかし、耐摩耗や耐食性といった点で他の材質に見劣りし寿命が短い点がデメリットです。
白銅で作られたチップの特徴
白銅とは、「銅」「ニッケル」からなる合金です。
ニッケルの割合は10%~30%とされていますが、これが多いものは銀に似た色となるため代用品として貨幣にも使用されています。
100円や50円、むかしの500円硬貨はこの白銅が使用されています。
特徴としては、展延性が高いとともに、耐食性にも優れています。特に海水に対する耐食性が強いため、船舶関係の部品に多く使用されています。
また、黄銅と比べて薄く加工できるため、航空機銃の薬莢にも使われています。
白銅は黄銅と同様に、加工しやすく比較的安価な為、チップによく使用されています。
黄銅と比較すると、耐食性が優れている点が特徴です。
ステンレスで作られたチップの特徴
ステンレス鋼とは、「ニッケル」「クロム」を含ませた合金剛です。
汚れやサビという意味の「ステイン」がつかない「レス」という意味で、その名のとおり非常に高い耐食性を誇っています。
その硬度と高い耐食性から、様々な用途で使用されています。
錆加工が不要であるため、鉄道車両や厨房設備などの屋外や湿気が多い場所での使用頻度が高いのが特徴的です。
ボールペンのチップにもこの特徴が生かされており耐食性が高く、摩耗にも強い為、寿命の長いチップになります。
それゆえ、日本で生産されているボールペンのほとんどがステンレス製です。
チップ素材の違いによるボールペンの書き味
ここまでボールペンに使われる素材の特徴をご説明しました。
どの材質にも共通するのが、「加工のしやすさ」と「耐久性」です。
ボールペンのチップは精密な加工が必要です。それゆえ、その材料となる金属には加工のしやすさが求められます。
主に使用されているこれらの金属製であれば、書き味には大きな違いは生まれません。
しかし、それは新品での話です。
ボールペンは、使用される度に筆圧を受け、インクを流し続けています。それゆえどうしても、書き味が落ちてきてしまいます。
耐久性や耐食性がチップの材質ごとにそれぞれ異なりますので、書き味が落ちるまでの時間が異なります。
日本製のボールペンは、ほとんどが耐久性、耐食性に最も優れたステンレスで作られたチップを使用していますので、ボールペン選びにおいてそこまで神経質になる必要はありません。
こういう違いもあるのだ、という程度の認識で大丈夫です。