ダッチオーブンとは?特徴や種類について
アメリカの開拓時代に生まれたダッチオーブンは、食材をじっくりと熱して旨味を引き出すことのできる調理器具です。
自宅にオーブンがなくても、オーブンの代用としてパンやピザ、肉や魚のローストなど手間がかかりがちなオーブン料理を楽しむことができます。また、圧力鍋としての機能もあり、一つ持っていれば料理の幅がぐっと広がる鍋でもあります。
こちらでは、そんなダッチオーブンについてご紹介します。
ダッチオーブンの歴史や語源、素材別の使い勝手や手入れの仕方などについて詳しく解説しますので、ダッチオーブンの購入をお考えの方はぜひお役立てください。
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ダッチオーブンとは?
ダッチオーブンとは厚みのある金属製の鍋で、蓋の部分に炭火を乗せられるようになっているものです。そのように用いるため、多くは平らで蓋に縁取りがあるデザインで、蓋に炭を置きやすくなっています。
鍋をコンロや焚き火など火の上に置き、蓋にも炭火を乗せることで、オーブンのように上下から同時に中の食材を加熱することができます。鍋の形をしていますがオーブン料理に用いることができ、ピザやパン、ローストチキンなどの調理に最適です。蓋が扁平なため、ひっくり返してフライパンのように使うこともできます。
厚い金属製の鍋は世界各国の文化で使われていますが、ほとんどの地域でそれらは煮込み料理に使われるもので、ダッチオーブンのようにオーブン料理に鍋型の調理器具が使われることは多くありません。
語源
ダッチオーブンの「ダッチ」とは「オランダの」「オランダ人の」という意味です。しかし、ダッチオーブン自体がオランダで誕生したというわけではないようです。
ヨーロッパで使われていた「ビーンポット」という鋳物製の鍋が、アメリカに移住したヨーロッパ人の間で広まるうち、独自の進化を遂げたものがダッチオーブンといわれています。
それがダッチオーブンと呼ばれるようになった由来は諸説ありますが、一説には西部アメリカの開拓者に日用品を売り歩く行商人がオランダ人だったという説があります。そのオランダ人の商品の中に、厚い金属製のビーンポットがあったのです。
直訳すると「豆の鍋」という意味のビーンポットは、当時はまだ特徴のない、金属製の鍋の形状をしていました。その鍋にアメリカの開拓者たちが、野外でも使いやすいよう改良していったのです。直接焚き火にかけやすいよう鍋に脚がつき、オーブンのように使えるよう蓋に炭火を乗せるためのフランジ(ふち)がつきました。
野営地でも煮込み料理だけでなく、家庭で食べるようなパンを食べられるように工夫を凝らした結果、徐々に現在のダッチオーブンの形が出来上がったのです。
呼び名・表記について
同様の形状の鍋は、オーストラリアでは「キャンプオーブン」フランスでは「ココット」とも呼ばれます。
ダッチオーブンには大きく分けて二種類あります。焚き火にかけやすいよう底に脚がついた「キャンプオーブン(キャンプダッチオーブン)」とコンロにかけやすいよう平坦な底の「キッチンオーブン(キッチンダッチオーブン)」です。
後者のデザインをもとに、より使いやすいように改良した商品を「モダン・ダッチオーブン」と呼ぶこともあります。代表的な商品としてフランスのル・クルーゼ社のものがありますが、ル・クルーゼ社は自社の商品を独自に「フレンチオーブン」と呼称しています。
日本ではこれらに加え、同じ鋳物製のフライパンである「スキレット」や、深鍋にスキレットを蓋としてかぶせる調理器具「コンボクッカー」を総称してダッチオーブンと呼ぶ場合もあります。
ダッチオーブンの特徴
ダッチオーブンは、鍋に厚みがあるため内部の温度が均一になり変化しにくいのが特徴です。これにより、食材にじっくりと火を通すことができます。
蓋が重いため中の食材から出た水分が水蒸気として鍋内部にとどまりやすく、蒸気が蓋と鍋の隙間を密閉するため圧力鍋のような状態で調理することができます。
また、水蒸気が逃げにくいことから、食材から出た水分のみで蒸し焼きにする無水調理がしやすいという特徴があります。
ダッチオーブンの種類
ダッチオーブンは元々は鋳鉄製のものでしたが、他の金属を素材とした商品もあります。それらの中で主だった素材と、それらの特徴や使い勝手についてご紹介します。
それぞれの価格帯や手入れの仕方もご紹介しますので、ダッチオーブンを購入する際にお役立てください。
>>ダッチオーブンの種類と上手な選び方について詳しくはコチラ
鋳鉄製ダッチオーブン
ダッチオーブンの中で、最も手頃な値段で手に入れることができるのが鋳鉄製のものです。3,000円〜10,000円ほどが主な価格帯となります。
使い始めは錆びやすくシーズニングという手入れが必須ですが、使い込むうち油でコーティングされてテフロン加工のような焦げつきにくい状態になります。
シーズニングとは、まず中に水を張って沸かして出荷時に塗られている錆止めワックスを落とし、その後オリーブオイルなどの油を塗って熱し焼き付ける作業を繰り返すことです。
また、鋳鉄製のダッチオーブンは基本的にIH調理器で使用することができません。また、コーティングが剥がれてしまうため洗うときは金タワシや洗剤を使用できませんので、他の鍋に比べて取り扱いに注意が必要です。
取り扱いが難しいからこそ手入れをするうちに愛着がわくという声もあり、本格的なアウトドアが趣味の方などは鋳鉄製のダッチオーブンを選ぶ方が多いようです。
黒皮鉄板製ダッチオーブン
黒皮鉄板製とは、鋳鉄製の鍋の外側に製造過程で黒皮と呼ばれる被膜加工を施し、錆びにくくしたものです。シーズニング済みの鋳鉄製ダッチオーブンというイメージでしょうか。被膜加工の分価格は上がり、中心の価格帯は10,000円〜20,000円ほどとなります。
底面の加工によって、IH調理器での使用が可能なものもあります。黒皮は油によるコーティングとは違い、落ちにくいため金タワシや洗剤で洗っても大丈夫です。
手入れや取り扱いが楽なため、金額は多少上がっても使い勝手を取りたいという方におすすめです。
ステンレス製ダッチオーブン
ステンレス製は、ダッチオーブンの素材として最も新しいものになります。価格帯はもっとも高価で、ほとんどのものが15,000円〜30,000円ほどになります。
シーズニングなどの特別な手入れが不要で水洗いもでき、一般的な家庭の鍋と同じ感覚で使うことができます。ただし、ステンレスは傷がつきやすいため、金タワシでこすり洗いをすることは控えた方がいいでしょう。
焦げつきにくく耐久性もあるため、家庭で長くダッチオーブンを愛用したい場合におすすめです。鋳鉄製・黒皮鉄板製とは違う銀色のスタイリッシュな見た目も人気です。
アルミ製ダッチオーブン
アルミ製ダッチオーブンの利点は、軽くて持ち運びがしやすいことです。価格帯は、鋳鉄製とステンレス製の中間くらいで5,000円〜10,000円ほどのものが多いようです。
ステンレス製と同じくシーズニングは不要で、一般的なアルミ鍋と同じように使用できます。商品によってはIHでの使用や洗剤で洗うことも可能です。
重さは鋳鉄製の1/4ほどで軽くて扱いやすいことは大きなメリットですが、蓋が軽いため水蒸気が逃げやすく、圧力効果がかかりにくいというデメリットがあります。
また、直火にかけて使い続けていると鍋肌が変色し、見た目が汚くなりやすいという声もあります。ですが、キャンプやレジャーなどでは荷物が軽いということは大きな利点ですので、主に野外でダッチオーブンを使いたいという方におすすめです。